三兄妹がドタバタしながら事件を解決する。もうその時点でおもしろいじゃん。
という感想を持った小説『8の殺人』。
多くのミステリー好き読者に「とんでもないどんでん返し」と「とんでもないグロさ」を見せつけた小説『殺戮にいたる病』の著者、我孫子武丸さんのデビュー作品です。
奇妙な建物、刑事、美少女、密室、そしてボウガン。
ミステリー小説になくてはならない要素が詰まったハッピーセット。
ミステリー初心者でも楽しく読めること間違いなしの良作でした。
『8の殺人』感想
まったくと言っていいほど、スリルがない。
いや良い意味で。
結果として人が2人もボーガンで串刺しにされて、金田一少年だった『じっちゃんの名にかけて!』を2回ぐらい言っちゃうんじゃないかな?ってぐらいのちゃんとした事件だったんですが。
それがドキドキハラハラせずにしっかりミステリーを楽しめるという良作でした。
ただし逆にいえばドキドキハラハラしたくてこの本を取った人にはキツかったと思います。
いわゆるライトノベルのノリといいますか…本格派ミステリーが好きな方がこの手のノリを見せられると「無理やりすぎるだろ」とか「警察何してんのじゃ」とツッコみたくなるはずです。
特に主人公の速水刑事。
後輩の警官を被害者の家の中で3階から落下させてますから。しかも2回。
ニュースになるのは確実に殺人事件の方じゃなくてそっちですよね。
トリックは2つ出てきましたが、意外とわかった方も多いのではないでしょうか?
私は最初の鏡のトリックはなんとなーくわかりました。
大きな「すがた鏡」が出てきたり、右利き左利きが出てきたり。わかりやすいヒントも多く、謎解き要素でもおもしろいミステリー小説だったと思います。
ただ二人目の事件のボウガンのトリック。
あれはちょっと無理やり感あるだろ、と思いました。ドアに人間を突き刺して、その勢いが凄すぎて人間と共にドアが跳ね返って「バタンッ!」って。
それ本当にボウガンです?
なんかクジラとか捕まえるために使う捕鯨砲を思い出しました。
「ウサギを狩る時に使う」とか言ってましたけど、さすがにピーター・ラビットでもキレますよ。そんなの撃ち込まれたら。
このトリックには引っかかりましたが、それでもボウガンによるトリックは頭の中で想像図が浮かびやすいし、鏡のトリックも「金田一少年の事件簿」っぽくて良かったですし・・・
これはミステリー初心者におすすめしたい「ミステリー小説」のTOP10に入りますね。
雰囲気はかなりコメディっぽい。というかコメディです。
実写向きの作品でしたね。ぜひ実写化していただきたい。
世界観もトリックも何なく実写化できそうな内容ですし、ゆるいコメディの雰囲気をもったミステリードラマってよくある印象です。
主人公の速水警部は「阿部寛」
話せない美少女は「浜辺美波」
そしてボウガンを使ったサイコパスの犯人は「えなりかずき」
でお願いします。
多分ですが、この『8の殺人』を手に取った人って、我孫子武丸さんの『殺戮にいたる病』を読んだ後に
『この作者、ヤバすぎるだろ。ちょっと他の作品も読んだろ』
という人が多かったのではないかと思います。なにせ私がそうだったので。
ところが小説のテイストが全然違う。
「ちびまる子ちゃん」と「ベルセルク」ぐらい違う。
そのぐらいの違いがありました。同じ作者なのかと本気で疑いました。だから『殺戮にいたる病』のヤバさを求めてきた人には明らかに肩透かしだったはずです。
私もこの本を手に取った理由は『あの『殺戮にいたる病』の著者のデビュー作だって?オラ、ワクワクすっぞ』でした。
なので比較的早い段階でコメディのノリが始まってた時は少し戸惑いましたが、コメディのノリが心地よく楽しめました。
まあでもこれ。
逆にならなくてホント良かったですね。
この『8の殺人』を読んだ後に、
『あーコメディミステリーおもしろかった!じゃあ同じ作者の他の作品も読んでみよ!』
と言って『殺戮にいたる病』を手に取ってたら、その人は色々終わっていたでしょうね。
色々ムカつきすぎて血反吐はいて本をぶん投げてたと思います。
私もキレましたし。
ということでまだ『殺戮にいたる病』を読んだことない人はラッキーです。
今すぐ読んで、一緒に血反吐を吐きましょう。
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