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嫌な話を詰め込んだ逆ハッピーセット『許されようとは思いません』感想|ネタバレあり

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ジメジメした嫌な話を「ギュっ♪」と詰め込んだ逆ハッピーセットな小説『許されようとは思いません』の読書感想文です。

全5話からなる芦沢央さんの短編集。

タイトルからして夢のある話ではないと思っていました。しかしそれが逆に興味をそそりました。

通勤中の朝に読みましたが、率直な感想は、

「朝に読むもんじゃねぇ」

そして続きは夜ベッドの中で読みましたが、率直な感想は、

「寝る前に読むもんじゃねぇ」

いつ読んだらわからない短編集『許されようとは思いません』の各短編のあらすじと、その中で1番印象深かった短編の感想を書きました。



『許されようとは思いません』各短編あらすじ

目撃者はいなかった

『これでおまえも一人前だな』

入社して三年目のサラリーマン。ずっと最下位だった営業成績がついに大きく上昇した。

喜んだのもの束の間、それは発注ミスであった。男は自分のミスを会社にバレないようにある事を企てる。

ありがとう、ばあば

雪の降るの中、裸足でバルコニーにいる老婆。そして家の中には老婆を見下ろす孫が。

どうしてこんなことになってしまったのか。

孫のとった行動の理由とは。

絵の中の男

凄惨な絵を描き続けた画家。そしてその絵を鑑定する鑑定士。

どうして画家はそんな絵を描き続けたのか。どうして画家は事件を起こしたのか。

鑑定士の口から明かされる真実。一人称視点のミステリー。

姉のように

優しかった姉が起こした事件。姉が逮捕されてから、妹の家庭は徐々に狂っていく。

結婚、子育て、お金、ママ友・・・一人の女性の苦悩が積み重なっていき、たどり着いた「地獄」とは。

許されようとは思いません

祖母の住んでいた村に訪れた孫とその恋人。ある目的を持って十数年ぶりに訪れるも、村に着いた途端、村人たちの目線が…

そこで孫は恋人に祖母との思い出を語る。優しい祖母だったこと。そして・・・

祖母は殺人を犯した犯罪者だったことを。

『許されようとは思いません』感想

これ以降はネタバレを含みます。ご注意ください。

今回の短編の中で1番印象深く、感想を語りたいのは・・・

『姉のように』です。

北野武監督の映画『アウトレイジ』という作品で、キャッチコピーに「全員悪人」という言葉が使われました。

この『姉のように』にキャッチコピーをつけるなら「全員不幸」

主人公も子供も旦那も母親も姉もビックリするぐらい全員不幸。全員アンビリバボー。

しかもこのストーリー、側から見てる限りでは「誰が悪い」と自信を持って言えないほど、悪い人がいないのがタチ悪いですよね。

いや、もちろん犯罪という意味では、子供を死なせてしまった妹が悪いんです・・・が、彼女の旦那も旦那のような気もしますし。

旦那目線での話がなかったので勝手なことは言いにくいですが、とても「立派な旦那さん」って感じはしなかったですね。

これは子育てしたことある人、または現在子育て中の人が読むのと、それ以外の人間が読むとでは捉え方が全然違いそうです。

私は「子育てしたことない側」なので、シンプルに『お母さんつらかったよな、かわいそうだな』と思ってしまいました。

ストーリーの中でも子供に愛情があるのは分かったし、なんとか頑張ろうとしているのも分かったし、協力的じゃない旦那を見て「助けてやれよバカ」と思いましたし。

妹さんが、旦那の兄家族の子供を怪我させた、ってシーンがありましたけど、その時も旦那は奥さんのこと何にも信じてなかったですからね。

ここめちゃくちゃ腹立ちました。旦那に。

いやちゃんと謝罪はしないとですけど「うちの妻は絶対にそんなことはしない」ぐらい言ってやれよと。

しかも「妻の頭を鷲掴みにして」って・・・いや、DVじゃん。香川照之じゃん。

でも実際に子育てしたことある方なら、この母親を見て「大変なのはみんな一緒、甘えてんじゃないよ」っていうのでしょうか。

これは簡単に答えの出せないものですね。「子育て」って一括りにしても人それぞれだし、経済状況とか、住んでいる地域とか、周りの人間関係によっても変わってくるから正解なんてないんでしょうね。

実は私も「元幼児」なので、きっと両親には色々迷惑かけたと思います。

それでも今はパンツ一丁でパソコンポチポチできてるぐらい元気に育ててもらったので感謝しかないです。育ててもらって当たり前、じゃないんですよね。

今度実家に帰るときミスタードーナッツ70個ぐらい買って帰ります。

まあストーリーは嫌な話でしたが、「どんでん返し」という意味ではかなりおもしろかった作品でした。

まさか「虐待してたのはお前ほうかーい」と髭男爵のようなツッコミ入れることになるとは思いませんでした。お姉ちゃんは盗みをやっただけだったんですね。

途中で「サイフがない」と言ったママ友に対して全員が主人公の方に目を向けたってシーン。

「なんでだろう…お姉ちゃんが犯罪者だと妹も犯罪者に見えてしまうんかな?」と思いましたが、お姉ちゃんが盗人だったから、ってことなんですね。

一度こうなっちゃったらもうママ友関係は無理でしょうね。ってその後捕まっちゃったからシンプルに無理ですけど。

とにかく嫌な話が満載でキツすぎる小説でした。全然人にはオススメしたくない小説でもあります。

しかしこんな出来事が現実に起きたらもっとキツいので、逆に本の中のツラい世界を見て「自分は恵まれてるんだな、がんばろ」と思えるならいいのかもしれません。

でもまあオススメはしませんけど。




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