白井智之さんの『人間の顔は食べづらい』って小説を読んだんですが、「とりあえずグロい話なんでしょ?」とたかを括っていたらちゃんとミステリーなミステリー小説でした。
いや、グロいことはグロいんですけどね。
「経済回復のため、食用のクローン人間を育成して食べましょう」というぶっ飛んだ世界観なのに、そんな世の中で生きる人間がいやにリアルで面白かったです。
人間が人間を無理やり育てて食べてしまう、という倫理観を100%無ししたイカれた世界だからこそ、その中で起きる人と人の繋がりが、なんだか素敵に感じてしまったんですよね。
いや、グロいことはグロいんですけどね。マジで。
ということで『人間の顔は食べづらい』の読書感想文です。
『人間の顔は食べづらい』感想・レビュー
『いや、そうはならんだろ』
と言いたくなる世界線。肉を食べることで感染してしまうウィルスが世界中で蔓延し、肉を食べる人が少なくなってしまった。
すると栄養素不足となり、それが新たな社会問題に発展。それを解決しようとした政治家の政策がコチラ。
『人間の細胞からクローン人間を創り、それを育てて食べましょう』
いや、そうはならんだろ
なんですかこの倫理観は。鬼畜ですか。政治家はとんでもないこと言いますよね。ドラクエのラスボスだってそんな鬼畜なこと言いませんよ。いうて世界征服ぐらいですよ。
こういう食糧問題とか動物愛護的な問題があると、こう言う人も一定数いるかもしれません。
「人間は他の動物を養殖して食べているじゃないか。それを言ったら人間だって動物だ。人間を食べることも考えるべきだ。それができないなんて人間のエゴじゃないか。生きとし生けるものはみんな平等なんだから。それなのに君は食べれないと言うのか?それは人間の傲慢なエゴだ!」
誰だよ、お前は
「人間を育てて食べる」ことがなんでダメなんだ?とか聞かれても「なんとなくダメ」としか言えないですよね。理由なんてありませんし、言えと言われても言えません。ダメなものはダメです。
で、そんなダメなことが行われている世界の話なんで、正直言ってリアリティもないファンタジーと思って読んでいました。
ただその分、登場人物たちの内なる気持ちは素敵な部分もあったと思います。あんな世界観の話にしては、終わり方は綺麗でした。
あらすじのインパクトは弱い
この小説のあらすじはこんな感じになってます。
「お客さんに届くのは『首なし死体』ってわけ」。安全な食料の確保のため、“食用クローン人間”が育てられている日本。クローン施設で働く和志は、育てた人間の首を切り落として発送する業務に就いていた。ある日、首なしで出荷したはずのクローン人間の商品ケースから、生首が発見される事件が起きてーー。
角川文庫『人間の顔は食べづらい』あらすじ
いや、言うほど事件かな?
あらすじの冒頭が「お客さんに届くのは『首なし死体』ってわけ」ってネジが3〜4つ外れたようなセリフで始まり、【人間を無理やり育てて、◯して、食べる】ってことが当たり前になってしまってる世界で、「生首が送られてくる」って事件はインパクト弱すぎませんかね?
もう設定からして倫理観がバグりすぎてますから。生首が送られてきたって『あ、間違えて送っちゃいました、たはは』で済みそうな話に聞こえちゃうんですよね。
だって死体が家に送られてくる世界線ですよ?もしかしたら「ふるさと納税」の返礼品で”人間”があるかも知らないような世界線ですよ?
「今年は何にしようかしら。去年はシャインマスカットにしたから・・・今年は人間のバラ肉にしましょ♪」
って主婦が言ってる可能性すらある世界線ですよ。もう設定のハードルが高すぎるんですよね。
「クローン=入れ替わり」は推理しやすい
人間のクローンが出てくる話の時点で、私の頭の中にいる服部平次が言っていました。
『これは誰かが「実はクローン人間の方でした」ってオチがくるでぇ!』
って言ってました。もう本を読み始めたすぐに言ってました。
と言っても「チャー坊(柴田和志)=柴田和志」「河内ゐのり(風俗嬢)・河内ゐのり(歌手)」の叙述トリックは全くわからなかったですけどね。
だから真相が明らかになった時は驚いたことは驚いたんですが、衝撃度はそれほどではなかったです。「あ、ここで来たか」という感じで熱くなれなかった自分がいました。
どんでん返し系の小説が好きな私としては、非常にもったいなかったです。
皆さんもお気をつけくださいね。
頭の中に「西の名探偵」なんて入れとくもんやないでぇ!
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
もし良ければこちらの記事も読んでから帰ってくださいね。
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