『ルビンの壺が割れた』って 小説を読んだんですけど、何ですかこれ。
バックンバックンいっています、心臓が。小説を読み終わった瞬間にこんな動悸になるのは初めてです。
一言で感想を言うとしたら、とにかく怖かった。
なんで?って言われても言いようがないタイプの「怖さ」。ホラーとかそう言うことではなくて、とりあえず怖い。
とりあえず、めちゃくちゃ言いたいことあります。
『ルビンの壺が割れた』感想
気持ち悪い。
もうずっと気持ち悪い感じがほのかに感じる。変な小説でした。
この『ルビンの壺が割れた』を読んだ人のレビューにて「最初はかつての恋人たちが現代のSNSを使ってまた出会う恋愛小説か 思ったけど…その後の展開がすごかった!」と書いている人がいました。
また巻末にて書かれていた担当編集者さん「西山奈々子」の付記でも、「古風な男女の恋愛物語だと思って読み始めた」と書かれています。
確かに形だけ見たら「年配の男女によるFacebookを使った恋愛小説」にも見れました。
でも最初からずっと『この水谷って男、なんか気持ち悪いな…』って思っていたのは私だけでしょうか?
例えば、一通目で・・・
あなたのプロフィールを覗いたことに意味はありません。
↓
いや、それは嘘かもしれません。
↓
心のどこかでは貴女であればいいなと思いました。
↓
本気で願っていたわけではありません。
↓
貴女であってほしいとかなり本気で思ってました。
いや、フェイント入れすぎだろ。マラドーナかよ。
さらには
友達のページに行って、モザイクがかかっている写真をダウンロードして、大きく引き伸ばして窓ガラスに反射した顔を見る。
もう防犯カメラを拡大して犯人を追うCIAの人じゃん。
もちろん水谷の気持ちが全然わからないわけじゃないです。
突如姿を消した昔の恋人かもしれない…そう思ったら調べてみたいって気持ちもわかります。目いっぱい画像を引き伸ばしてハズキルーペをかけながら「うーんうーん」って調べたくなる気持ちもわかるんですけど・・・
それをいちいち言い訳しながら「私、紳士ですので」みたいな姿勢を崩さずやっているのが気持ち悪いんですよね。
毎回「このメッセージを最後にする」とか言いながら全然最後にしてないし。構ってほしい人の典型です。
そして「詮索しない」とか言っておきながら「どこに住んでる?」「今の苗字は?」とちょいちょい詮索してくるのも気持ち悪い。
昔話の中でほんのり入ってくる自慢話もうざったい。クオーターの美人な義理の妹がいて、惚れられて許嫁になったとか・・・
クオーターって情報、いります?
そしてその妹と「毎日セックスをした」って情報、心底どうでもいい。言うな、そんなこと昔の恋人に。というか誰にも言うな。
って水谷に対して色々言ってますけど、この小説は他の登場人物もみんな気持ち悪いですよね。
まず叔父。待ったなしで気持ち悪い。
息子(水谷)と娘(優子)を結婚させようとしてた理由って、優子をそばに置いておきたいからですよね?いつでも義理の娘と楽しもうっていう。
義理の娘に手を出して、しかもその娘の裸の写真を金庫に保存しているって。気持ち悪さのレベルが違います。嫌悪感が凄すぎる。
そして個人的にはやりとりをしていた未帆子も色々ズレてます。
お金がなかったため「家族や周りに黙ってソープで働いていた」ことに対しては何も言うことないです。
しかしその後大学に入学して水谷とちゃんとお付き合いしたわけですよね。そしてお互い愛していたと。
それにも関わらず普通に高尾くんとセックスしてるのは…シンプルにおかしくないですか?気持ち悪いよ。
終盤で未帆子が水谷に対して『私の男性関係があなたに影響を与えましたか?与えてないですよね? 』というようなことを伝えるシーンがありました。
もちろんそれが原因で水谷が幼い女の子に手を出していた責任にはならないし、もちろん水谷が最悪なんですけど。
それとは別にして「本気で好きになった女の子が実はソープで働いていました」って知っちゃったら…理由はどうあれ本気でトラウマ確定です。
だったら付き合ってやるなよ、水谷と。
『ソープで働いてます、お付き合いしますか?』『はい、付き合います』の流れなら別にいいけど、「私何も悪いことしてません」は違うと思いますよ、私は。
高尾くんに関しては、未帆子が脅されてた可能性もゼロじゃないですよね。こいつも気持ち悪いですし。というか基本みんな気持ち悪い登場人物でしたし。
大学の同じ同好会の女の子に金払って抱かせてもらう演劇部の男性陣とか、まあまあ気持ち悪いですし、投資してきたジジイもソープ行ってるし。
「仏の宮さん」とか言われてるやつはソープも行って、金も盗んだとか。もう「悪魔の宮さん」だよ、お前は。
もうなんか色々救われなくて「気持ち悪さ」で言ったらかなりの高得点な小説でした。
そして何より、衝撃度っていったら個人的には過去トップレベルだったと思います。
あなたは本を読み終わった瞬間に心臓がバックンバックンいってた経験ありますか?
トリックがすごすぎたとか、どんでん返しがやばすぎたとか、そういう経験はあっても心臓がバックンバックンいうことってないと思うんです。
私は最後の一文が怖すぎて心臓の動悸が止まらなくなったんですよね、なぜか。
夜中に一人で読んでたから、っていうのもあると思います。ページがなくなっていくにつれ嫌な情報が盛りだくさんになってきて…最後どうなるんだろう、怖いなぁと思ってた矢先にあの一文。
めちゃくちゃ怖かったです。
レビューを読むと、あの一文に対しては否定的な意見もあるようです。淑女みたいな雰囲気だったのに、あの一言で台無しになった、と書いている方もいました。
個人的には小説として一番最後の文章だとするならばあの一文で正解だったと思います。
なんせラストの一文を読んだ日の夜は怖すぎて、寝る前にいつも目の上に乗せてる「小豆のホットアイマスク」が乗せられませんでした。
意味わからないですよね?私もです。
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